はちみつ書房
ようこそ、はちみつ書房へ。 どうぞごゆるりと―。
 聖域
 大倉 崇裕著/東京創元社

 暑くなると「山」の本が読みたくなる。
 「クライマーズ・ハイ」を再読しようかと思っていたところに この作品。
 やっぱり夏は山だなぁ。

 
聖域聖域
大倉 崇裕

東京創元社 2008-05
売り上げランキング : 945

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


 山での事故の責任を感じ、山から遠ざかって三年になる草庭。
 大学の山岳部で盟友でもあった安西に誘われ、久々の登山に。
 もうすぐ未踏峰の山に挑戦するという安西に、わが身をふりかえる草庭。
 安西と別れて間もなく、安西が長野で滑落死したという知らせが入る。
 安西ほどの人間が滑落死などするはずがないという一念で、その死について
 調べ始める草庭。
 果たして安西の死の真相は―。


 食うや食わずの生活でも、山に登ることだけはやめられない。
 この作品に登場する安西も草庭も然り。
 それが理解できるかどうかと言われれば、答えはNOなのだが。

 ミステリーとしては、その結論に目新しさはないのだが、
 山と男臭さを堪能するには十分かと。
 それにしても、草庭のまわりに登場する男達のなんと男らしいことよ。
 「これが山男と言うものさ」と言われれば、納得するしかないわけで―。

 私にとっては、山は見上げるもの・眺めるもの。
 自分が登るなんて気にはならないんだよなぁ。
 ★★★★

 
page top
 神田紅梅亭寄席物帳 道具屋殺人事件
 愛川 晶著/原書房

 落語+ミステリー。
 本の値段はお高めですが、やっぱり読みたくなりまして・・・。

 
道具屋殺人事件──神田紅梅亭寄席物帳  [ミステリー・リーグ] (ミステリー・リーグ)道具屋殺人事件──神田紅梅亭寄席物帳 [ミステリー・リーグ] (ミステリー・リーグ)
解説・鈴々舎わか馬

原書房 2007-08-23
売り上げランキング : 95022

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


 事件が起きると活躍するのは、二つ目の寿笑亭福の助。
 本来の師匠が病気のため高座にあがれなくなったため、
 今は別の一門で研鑽を積む日々。
 
 実は影で活躍するのが、福の助最初の師匠である馬春。
 言葉が不自由になってしまったが、文字盤を指で指すことで
 会話が成立し、しかもユーモアも忘れていない。

 馬春のおかみさんも江戸っ子堅気で粋。
 亭主の病気に暗くなることなく、夫婦で息のあったところを見せている。
 困ったときにはこの夫婦を頼る福の助の気持ちもよくわかるというもの。

 不満がひとつ。
 福の助と奥さんである亮子の関係性。
 穏やかな人柄で福の助が描かれたと思ったら、奥さんの言動で口もきかなくなる。
 まぁ、聖人君子でなければ人間なんてそんなものかもしれないが、
 そこに一貫性が感じられなかったのが残念。

 落語そのものもいくつか取り上げられているので、
 やはり落語が聞きたくなるし、見たくなる。
 DVD「ちりとてちん」が売れ行き好調らしいので、見てみようかな。
 ★★★★

 
ちりとてちん 完全版 DVD-BOX I 苦あれば落語あり(4枚組)ちりとてちん 完全版 DVD-BOX I 苦あれば落語あり(4枚組)
貫地谷しほり

VAP,INC(VAP)(D) 2008-06-04
売り上げランキング : 99

Amazonで詳しく見る
by G-Tools



 
page top
 最後のプルチネッラ
 小島 てるみ(おじま・てるみ)著/富士見書房

 1頁めからその物語に引き込まれ魅了されたというのに、
 悲しいかな私にはこの物語を伝える語彙がないのだ。

 
最後のプルチネッラ (Style-F)最後のプルチネッラ (Style-F)
(2008/04/03)
小島 てるみ

商品詳細を見る


 プルチネッラ ―それは「最高の喜劇役者」に捧げられるナポリの称号―
 舞台はイタリア・ナポリ。
 ふたりの少年が登場する。
 ひとりは役者一家に生まれ、容姿や才能に恵まれたルカ。
 もうひとりはナポリの中でも最貧民が暮らすスペイン地区の少年ジェンナーロ。
 普通に暮らしていたならば出会うはずのなかったふたりがプルチネッラに
 導かれるように出会ったのは、演劇のワークショップ。
 果たして「最後のプルチネッラ」となるのは、ルカなのかジェンナーロなのか。


 道化であるプルチネッラは、どんな時でも他人を笑わせなければならない。
 一見恵まれたように見えるルカも心には深い闇を抱え、
 陽気さがとりえのようなジェンナーロも家族に縛られている。
 
 まだ子供であるふたりがプルチネッラにこだわるのは、
 その称号を得た先に待つものに期待しているから?

 ルカとジェンナーロのプルチネッラをめぐるあれやこれやは
 「ガラスの仮面」を彷彿させる。
 もちろんルカがあゆみで、ジェンナーロがマヤ。

 この作品の注目すべき点は、間あいだに挟まれる挿話の数々。 
 初めはその唐突さと意味がわからないのだが、
 最後まで読み通すと、そういう理由で挟まれていたのか、と納得。

 初めての作品でこれだけの力量。
 小島てるみさん恐るべしである。
 ★★★★
page top
 ショコラティエの勲章
 上田 早夕里著/東京創元社

 スイーツ!スイーツ!スイーツ!
 読みながらスイーツへの欲は膨らむばかり・・・。

 
ショコラティエの勲章 (ミステリ・フロンティア)ショコラティエの勲章 (ミステリ・フロンティア)
(2008/03)
上田 早夕里

商品詳細を見る


 神戸の老舗和菓子店・福桜堂。
 売り子として働くあかりは、和菓子・洋菓子を問わずの甘党。
 福桜堂の二軒隣にオープンしたショコラ・ド・ルイも気になって仕方がない。
 あかりが初めてルイを訪れたその日、些細な事件に巻き込まれたことをきっかけに
 ルイのシェフ・長嶺を知ることになり―。


 文章だけで食べ物を書くというのがどれだけ難しいことか。
 この作品はそれを難なくこなし、文章だけでありありと数々のスイーツを
 思い浮かべることができる。

 ミステリ・フロンティアから発行されているが、ミステリー色は薄い。
 むしろ福桜堂、ショコラ・ド・ルイを巡る様々な人間模様に重きをおいた内容かと。
 
 聡明なあかり、ショコラティエとして毅然としているがどこか謎めいた長嶺。
 このふたりを軸に物語りは展開する。
 あかりと長嶺に恋愛要素はあるのか否か。
 なんとなく匂わせておいて、ジ・エンド。
 どうにも続きが気になるので、続編も有りかと。

 さて、この物語を読んでスイーツが食べたくならない方はいないはず。
 それくらい「おいしい物語」です。
 ★★★★
 
 
page top
 被取締役新入社員(とりしまられやく しんにゅうしゃいん)
 安藤 祐介著/講談社

 TBSと講談社が企画した『ドラマ原作大賞』の第一回大賞受賞作。
 31日(月)午後9時から、早速ドラマ化。
 主演は森山 未来さんだそうで。

被取締役新入社員被取締役新入社員
安藤 祐介

講談社 2008-03-11
売り上げランキング : 114471

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


 
 何をやらせてもまるでダメな鈴木 信男。
 まともに職に就いたこともないというのに、
 ひやかしで受けた大手広告代理店に合格してしまう。
 表向きの肩書きはアシスタント・ディレクター。
 しかし、裏の仕事として「年収三千万の被取締役」が与えられ。
 実はこの仕事、他の社員の不満や愚痴を一身に受けるというもの。
 ひとりいじめられっこ政策で社内を活性化させようとする
 上層部の目論見は成功するのか―。


 爆笑するという謳い文句だったので、期待していたのですが、
 私は全然笑えませんでした。
 笑うよりも、この会社の発想に嫌悪感。

 何より薄ら寒いのは、「人は自分より下の人間を身近にすることで溜飲を下げる」
 という原理。
 そんなことはない!なんてキレイごとを言うつもりはないけれど、
 せめて本の世界くらいは、こういうのがない方がありがたいなぁ。

 そして、これは人それぞれの感じ方だと思いますが、
 鈴木信男を語り手にした全編が、微妙に下品に感じられました。
 どうせなら、鈴木信男を語り手にせず、第三者が客観的に書いた方が
 良かったんじゃないかな、なんて思うのです。

 取締役が被取締役になるという発想はおもしろいのに、
 私には合わなかったみたい。残念。
 ★★★
page top
Copyright © 2005 はちみつ書房. all rights reserved.